アドミクス

エンジンは

RB26
RB26

エンジンは生き物のようで大好きです。
明らかに機械・部品の集合体なのに。
空気を吸って、吐き出します。その鼓動さえも魅力を感じます。

エンジンは回転運動を作り出しています。
空気を吸い込み、燃料を燃やして熱エネルギーを発生させ、クランクシャフトを回して回転運動に変換します。
ブレーキと全く逆の仕事を行なっています。
ブレーキはパッドでローターを挟み、熱エネルギーを発生させ、回転運動を大気中に放出してクルマの速度を減速させます。

この一連の原理を理解できればエンジンチューニングは難しいものではありません。
大原則として、エンジンチューニングとは、”より熱交換効率を向上させる”ことにあります。
絶対的な出力向上を目的としてはいけません。
目指すのは、”より高いトルクをより広い回転域で発生できる”ようにしてあげることです。

よく巷ではターボエンジンは空気を押し込むから出力があがる、馬力が出ると言われていますが、間違いではありませんが正解ではありません。(たしかに見せかけのピーク馬力は向上しますが)
空気は圧縮すると温度が上がります。

「気体の圧力Pは体積Vに反比例し絶対温度Tに比例する」

という法則があります。
イタズラなハイブーストは効率が向上しているわけではないのです。(そのようなエンジンは幅広い回転域で高トルクを維持できない)
ブーストはタービン風量、エンジンの能力で効率の良いポイントが必然として導かれてくるわけです。
所詮、タービンは風車ですから。
もう一つ、「タービンで上(高回転)を稼いで、カムで下(低回転)を稼ぐ」という言葉(たまに逆も)を耳にしますが、大きな間違いです。
これは大きめのタービンに小さなカム、または小さなタービンで大きなカムという組み合わせです。
さらに、「圧縮を上げてトルクを出す」という言葉もよく聞かれますがその方向性も間違いです。
たしかに圧縮比を上げれば単純に熱効率が向上するように見えますが、実際にはデメリットも同じくらい発生します。
運転してみると速いと感じる錯覚を起こしますが、そのようなエンジンは実際にはあまり速くありません。
圧縮比の向上と速さは比例しないのです。

”速さ”とは
単位時間あたりに対して車速が変化する事と、
絶対的な車速(トップスピード)の両方を指して通常言いますが、大切なのは前者の速さです。

ターボエンジンの魅力はNAエンジンでは到底到達できないエンジンの回転数変化が魅力といえます。
そのためには出来る限り広い回転域で、出来る限り過給圧を発生・維持させることが大切です。
気を付けないといけないのは過給圧そのものに主眼を置きすぎた場合に前述のような無理な組み合わせを施してしまう場合が多々見受けられます。
そのような無理な組み合わせは機械的な寿命をすり減らす短命なエンジンになってしまいます。

NAエンジンの場合は風車がないのでチューニングの幅は狭くなります。
なぜなら、機械的な能力を超えることは出来ないので、目標とする馬力で全てが決まってきます。
馬力とはトルク×回転数となるため、目標馬力がとても高いのに発生出来るトルクが限られているエンジン(小排気量)の場合は高回転型になってしまいます。バイクやF1エンジンはその典型です。
逆に大排気量NA(アメ車V8等)はトルクに余裕があるために回転を上げなくても馬力が出ます。

NAチューニングは構成部品がターボエンジンに対して少ないために特にカムシャフトが重要なウェイトをもちます。
作用角はもちろん、リフト量、そしてプロフィールです。組み付け時にはタイミングも。
チューニングメーカー各社が同じエンジンに対して、スペック上で同じようなカムシャフトが売られていますが、実はそれぞれ違います。
カムシャフトのリフトカーブを決めるプロフィール(計算式)が違うためです。
この場ではどのメーカーのモノが良いのかという説明は割愛させていただきます。
そして、NAは圧縮比の設定、インマニの太さ、EXマニの太さ長さが大切です。
すべての帳尻を合わせないと目標とする特性のエンジンになりません。
つまり、部品選び、組み付けで全てが決まってしまうわけです。
逆に言うとNAは組み上がった時点で決まってしまっているのでセッティングはそれほど難しくはないです。(独立スロットルエンジンは面倒ですが。セッティングの話はまた後日)
そのためNAは、原始的な燃料供給装置であるキャブレーターでもジェットが決まるとソコソコの性能を達成出来てしまうわけです。
おそらくこの最初のパーツチョイスが”NAチューニングは難しい”と言われる所以であると思います。

ターボエンジンも本来であればNAチューンニングのノウハウが必要ですが、ターボエンジンはとにもかくにもタービン風量という絶対値が存在するので、それに対応した排気の通り道であるマフラー口径、インタークーラーサイズ等が必然によって簡単に導き出されます。
そのため、NAほどのシビアさを感じないままパーツチョイスされるのだと思います。
しかし、ターボエンジンこそ微妙なパーツチョイス、組み付けで仕上がりに大きな影響が出てきます。
もちろんカムシャフトが及ぼす影響もより大きくなります。
タービンそのものも、各社から同じような風量(対応馬力)のタービンが売られていますが、それぞれに特徴があります。
サージタンクは目的(ここでは説明省略します)を持って装着します。必要がなければ無理に社外品に交換する必要はありません。
スロットルも同様です。スロットルを大径化したからと言って出力向上に直接は結びつきません。
その他、パイピングの形状・取り回し等も大切ですが、車体側の都合によって実現性が大きく左右されるので、現実にはかなりの制約を受けた中で最善の形状にします。

そして最終的には目標とする出力に対して、発生させる熱エネルギーに対しての必要条件となる、インジェクター・燃料ポンプを用意するわけです。

エンジンチューニングには魔法はありません。ギミックを積み重ねていくだけです。

最後に宣伝を少々。
「弊店では、NA・ターボ問わず、レシプロエンジンであればどんなエンジンもチューニング出来ます」
皆様の来店をお待ちしております。
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