アドミクス

ECU、CPU、ROMセッティング

ECU
ECU

コンピュータセッティング、ROMセッティング、ECUセッティングと呼ばれているエンジンマネージメントについて書きたいと思います。

エンジンが回るためには燃料を燃焼室に送り、プラグから火を飛ばさないといけません。
それを制御するのがエンジンコンピュータです。
最近のクルマはさらに、車両制御(トランスミッション、ABS、VSC等)も一元化された、もしくは統合制御されたコンピュータを採用しています。
これは、クルマを走らせること全てを管理したいために進化したわけです。
メーカーはクルマをより安全に、より速く、より快適に進化させてきました。

と、前置きが長くなりましたが、エンジンチューニングにおいてコンピュータセッティングは欠かすことができません。エンジン構成部品が変わったわけですから、それに合わせる必要性が発生します。
と、いうより、コンピュータセッティング(以下セッティング)という行為もエンジンチューニングの中のひとつなのです。
セッティングで魔法のようにエンジンが生まれ変わるかのような風潮が見受けられますが、それは違います。
エンジンは構成された部品・パーツの絶対的な能力を超えて動くことはできません。
セッティングで魔法のようにエンジンが変わったのならば、それはそれまでのセッティングが合っていなかったのです。
とりあえずここでは、一般的なチューニング対象とされるエンジンのセッティングについて書きます。

この業界の定番の日産車のセッティング。
CAN搭載以前(Z33)の車両はメインコーンピュータ書き換えが容易です。
数車種だけが追加基盤が少々高額(5万位)なだけで、ほとんどの車両は安価に書き換えが可能です。
特にR32までの車両に関しては、新規にROMを買う必要もなく、自給自足でコンピュータ書き換えが出来ます。
そのためユーザーさん自ら書き換えを行なっている場合があります。
トヨタ車などは、追加基盤が高額になります。
そのため、VproやパワーFCを使用するのが一般的です。
最近のCAN搭載車の場合は基本的にメインコンピュータ書き換えが通常です。
しかしCANの場合はリアルタイムエミュレーターが使用できないためターボ車等のチューニングには不向きといえます。
リアルタイムエミュレーターとは、テクトム社製”MT2000"、プリズム社製”ロムスコープ”などです。エンジン始動状態でROM内のアクセスを監視しながら、同時にリアルタイム書き換えが出来ます。
ターボ車の場合はこのリアルタイム書き換えが出来ないとセッティング作業はかなりの困難を強いられます。
なぜならターボの場合はタービン交換等を行うと吸入空気量が劇的に変化してしまうためです。
最近はメイン書き換えの方が各種補正機能を生かしたままで動かせるのでフルコンにしない方が良いと言われています。
間違いではありませんが、Vpro等フルコンを使いこなせていない場合が多いのではと感じます。
純正メイン書き換えの場合は少々間違った点火時期、燃料であったとしても、自動的にフェイルセーフが働くのでエンジンが損傷するほどの大事に至りにくいのです。
近年のエンジン制御コンピュータは何重にもフェイルセーフが働くのでなおさらです。
あたかも人工知能かのような制御を行なっています。
それはひとえに、基盤の進化による圧倒的な処理速度、搭載データ量によるものです。

たしかにフルコンは純正メインコンピュータほどの補正機能はありません。
何より、フルコンはセッティングする側が補正マップを足していかなくてはならないので、セッティングを取る人間によって仕上がりが大きく左右されます。
しかし、メインコンピュータはあくまでもノーマル状態での出力馬力の範囲での制御を第一に考えて作られています。
ノーマルからは劇的に空気量が増大したエンジンの制御には適しません。
例えばブースト1キロの時と、1.2キロの時、その他回転数変化に対して、より正確な数字を入力できないのです。
そのためノーマルから過大に変化した空気量に対しては非常に曖昧なセッティングになってしまいます。
つまり、エンジンの主要構成部品を交換して、ノーマルからは飛躍的な出力向上が図られたエンジンにおいては、"エンジン機械の要求する燃料、点火時期をより最適化するコンピュータセッティング”という行為の狭義の意味からみればメインコンピュータの書き換えでは、妥協した曖昧なセッティングになってしまうという事なります。

エアフロ(Lージェトロ)とエアフロレス(D-ジェトロ)の関係も間違って認識されてるようなので説明したいと思います。
「エアフロはより正確な空気量を検出出来る」と言われますが、間違いではありませんが正解ではありせん。
エアフロは場所、季節を問わずにどこでも調子良く走れると言われますが、エアフロレスでも可能です。(NA、ターボで必要となるセンサー類が違ってきます。もちろんマップの制御方法も。それを見抜けるかどいうかが鍵となります。)
逆に言うと、エアフロの場合は同じ空気量がエアフロを通過したとしても、サクション・クリーナーの形状で出力される電圧が変わってしまいます。
そのため、エアフロ制御の場合はセッティング時に使用したクリーナー、パイピングからの変更は不可となります。
エアフロレスの場合はそのロジック上、どうやっても制御不能な組み合わせが存在します。
”ターボ+独立スロットル+連続可変バルブタイミング機構”です。(スイッチ可変は除きます)
上記の組み合わせのエンジンは圧力センサーの出力電圧に依存した負荷認識では制御しきれません。
ブースト圧(タービン回転)も連続可変しているわけですから最終的なエンジンの吸気量を圧力センサーだけでは判断できないためです。
よく、「D-ジェトロの場合は大気圧補正が不可欠」と耳にしますが、そんなことはありません。
確かにあったほうがいいですが、それは吸入空気がタービンに過給されていない領域においてです。
過給後にエンジンに入る空気は必ずタービンで濾過された空気です。
そのため、圧力依存の負荷認識でも十分に対応できます。
つまり、大気圧補正は必ずしも必要とはいえません。
それよりもターボ車の場合はA/Fセンサーを取り付けてのフィードバック制御の方が向いています。(負圧領域においてのみ使用)

NAハイチューンエンジンにはスロットル制御方式が適しています。
もちろんその場合は吸気脈動の影響を受けない独立スロットルがオススメです。
NAハイチューンエンジンではカムシャフトもそれなりのスペックのモノを組むでしょうから、大きなスロットルが一個のシングルスロットルではスロットル全閇~ハーフ位までのインマニ圧が安定しないためです。(この場合、コレクター容量・インマニブランチ長に大きく影響されます)
NA独立スロットルにおいては大気圧の補正を必ず全域で入れないといけません。
もちろん、さらに極低速時・巡航時のエリアにA/Fセンサーを取り付けてのフィードバック補正も有効です。
(弊社ではA/Fセンサーでの補正はお客様の使用用途・予算を考慮して付けたことはありません。フィードバック無しでも十分に調子良く、どこでも始動・走行出来るからです。)

フルコンはA/Fフィードバックをかけないと満足に走れないという言葉を耳にしますが、それは間違いです。
なぜならエンジンは多少の空燃費のズレには関係なく回ります。(2~3ずれても動きます)
動かないとすれば、マップの基本的な設定が間違っているのです。
ノーマルからは劇的な吸入空気量変化を遂げたエンジンにはフルコンの方が適しています。

フルコンのセッティングの場合は、ハード的にはノーマルから2倍以上の出力変化を遂げたエンジンにおいても、ノーマル車両と同等の扱いやすさ、乗りやすさを目指します。
ROM書き換えの場合は、ノーマルのダルな箇所を出来るだけ消して、アクセルに俊敏に連動するスポーティな味付けを目指します。

以上のようなことを考慮してセッティングを行います。

色々と書き連ねてみたはいいのですが、取り留めない内容になってしまいましたが乱文お許しください。
もちろん、実際のお客様への提案の折りには、使用用途、予算等を考慮してベストな提案をさせていただきます。

誤解の無いように言いたいのですが、

”コンピュータを書き換えることができる”ということと、

”セッティングを取れる”ということは

別の問題です。
エンジンはセッティングが決まると、エンジン自らが勝手に回っていくようなフィーリングになります。
ツキがどうだとか、トルク感がどうだとか、体感が気持ちいいとか良くないとか、そのようなことは存在しません。機械そのもののクセ・特徴がはっきりします。

あくまでも、ドライバーがアクセル操作をし、スロットルが変化し、その結果の吸入空気量の変化に対して出力が増減されるわけです。

つまり、”アクセルペダルとはエンジンの出力増減装置”と定義できます。

コンピュータセッティングとは、エンジンという機械部品の集合体が綺麗に滞りなく回るように燃料、点火を与えるロジックを構築する行為です。
魔法は存在しません。あくまでも適切なエンジン制御ロジックが存在するだけです。

最後に、ノーマルから大幅な出力向上が図られたチューニングエンジンにおいてもセッティングが決まっていれば、容易く壊れたりしません。(もちろんその出力に対応する部品が必要ですが)

ノーマル車が今後どんなに進化・進歩しても、

”チューニングエンジンの圧倒的な吹け上がり”は

実現できません。

アナタも一度は本物のチューニングエンジンを体感してください。






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