アドミクス

足回りセッティング、セットアップ。

FSW走行
FSW走行

さて、今回は足回りのお話です。
足回りの話の中でよく使う言葉「コーナリング」

この言葉は、足回りについて話す人が持っている「コーナリング」のイメージによって大きく内容が変わってしまいます。
そもそもコーナリングとは、車という物体のベクトルを変えること、コーナーのどこを通ろうと、コーナリングする事に変わりはありません。

そこで大切なのが、コーナリングイメージです。

コーナーに差しかかった時、ブレーキペダルを踏み、ハンドルを切り、アクセルを開けて立ち上がる一連の動作の中に、「ドライバーのイメージと車の動きが同調すること」が一番大事なことです。
スポーツ走行をする上では、車を作る側、運転する側、両方にイメージがあります。
そのイメージに対して、予想に反して突飛に外れたクルマであってはいけません。

例えば、曲がるという行為のなかにも、
ハンドルを切っただけで曲がるのか?
しっかりとブレーキングをした時に良く曲がるのか?
アクセルを開けた時に車が沈み、サスペンションが動いてトラクションが掛かっているのか?
車高が低く、サスペンションが動きようがないからトラクションが掛かっているように感じるのか?
クルマを作る上で、その動きを見抜く事が出来ないと、とんでもないクルマになってしまいます。

運転の楽しい車はどういう車かと聞かれたら、ハンドルを切ったら曲がって、アクセルを床まで踏み込んだら前に進む車とは答えませんよね?

気持ちよく曲がって、軽快に加速する車と答えるはずです。

「気持ちよく曲がる」これは、ドライバーがしっかりとフロントタイヤに荷重が載ったのを確認し、ハンドルを切ったときに、車が曲がりだすことを言います。
そこで大切なのは、適正なアライメント設定と、しっかりとドライバーにインフォメーションを与えてくれるサスペンション、そしてブレーキです。
適正なアライメントとは、ハンドルを切れば曲がるアライメントではなく、ドライバーが意思をもって動かしたときに反応するアライメントです。
特に、高速で走っているときにクルマは不安定な状態になり易い瞬間です。
そんな時に車体がドライバーの予想に反して不用意に動いてしまっては、ドライバーに不安をあたえるだけです。
アライメントが適正であれば、道路に落ちていた物を急ハンドル操作で避けても、ギャップ・段差を通過しても、ぼんやり運転しているときでも、車はスピンすることなく走ってくれるはずです。

今、その瞬間のクルマの状態、インフォメーションを与えてくれるサスペンションとブレーキ。
これも、アライメントと同様です。不用意に車が動いてしまってはドライバーに不安をあたえるばかりです。
サスペンションは、乗り心地が良い事も大切ですが、路面のギャップを超えた事も、コーナーで横Gが掛かっている事もドライバーに教えてくれなければ、タイヤが破綻した瞬間にコースアウト、なんてことに容易に陥ります。
ブレーキも同じです、コーナー進入の減速時にタイヤがロックしそうで、ペダルを踏みこむのを躊躇してしまうブレーキパッドは論外です。
ドライバーに余計な不安を与えているのは動きを予想できないパッドだからです。
よく、”レースで使われているパッドだから大丈夫”という言葉を耳にしますが、タイヤの使われ方が違います。
レース用のタイヤはエアボリュームがあるため、ブレーキング開始からタイヤに摩擦(グリップ)を発生させるまでの時間がかなりあります。
しかし、一般スポーツラジアル(Sタイヤも然り)では偏平率が低く、ブレーキング開始から摩擦発生までの時間はレース用タイヤとは大きく異なるため、レース用のブレーキパッドでは一般タイヤには向きません。
また、市販車はABSの介入タイミングも早く、さらに技術が進んでドライバーに介入を気付かせないレベルになっています。
その場合、ブレーキペダルを踏んだ瞬間からABSが介入しているのに、そのパッドが効きすぎている事に気付かないドライバーも多数います。
そして、ABSの介入が多過ぎる場合は、パッド表面の温度が上がりすぎてある時突然ブレーキペダルが床まで、、、そんな事もあります。

軽快な加速?これはエンジンセッティングにも関係してくるので、あまり深くは書きませんが、アクセルを開けてコーナーを脱出する時、リアサスペンションが沈んで、リアタイヤの転がりが解からないとアクセルを床まで踏むのには勇気がいると思います。
その、リアサスペンションの沈み、タイヤの転がり、さらにエンジンの吹け上がりが同調したとき、軽快な加速が生まれると思います。

ここまでの話で解るように、車を作るうえでは、乗り手の持つイメージも明確でないととんでもない方向に車がいってしまう場合があります。
一言で曲がらないと言っても、コーナーの進入時と脱出時では大きく違うように、ドライバーの感覚でも車のセットアップは変わってきます

どんな運転・操作であってもクルマが忠実に動くのであれば、乗っている人間はゲームのように決まり決まった運転で良い事になってしまい、正確にボタン操作(ゲームを例にあげたのでこう書きました)できた人が一番、1ミス毎にタイムが落ちていき、車も仕様も違うのにほぼ同じタイムだった、なんて事になってしまいます、それでは車をチューニングする意味が無いですよね?

自分仕様にチューニングしたつもりが、右も左も同じ部品、同じタイムではワンメイクレースに出たほうがマシ、という事になってしまいます。
それぞれのドライバーに合わせた車でサーキットを走ってみると、ドライバーのコーナーに対しての得意不得意にも合わせた車になっているので、ああいう事をするとここがよくなる、ここをやるとここがよくなるなど、ドライバー同士のセットアップのお手本が自然と自分の周りの環境が出来上がってきます。
そこで再び、自分のドライビングの得意不得意や、次の方向性などを考えることができ、よりクルマへの理解を深め、コーナリングのイメージ作りをすることができるとおもいます。
そうすることで、車と自分との一体感が増して、車との会話を楽しむことに繋がっていくとおもいませんか?

貴方も、クルマの部品の一部としてコーナーを曲がるのではなく、クルマと一体になってコーナーを曲がることを楽しんでみませんか?




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